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第16号
WEB VERSION
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「人を得る」
横浜指路教会牧師、元中部教区総会副議長 藤掛順一
このたび、「まきば」のクリスマス礼拝にお招きをいただき、ひさしぶりに「まきば」を訪れること
ができました。ステンドグラスの入った礼拝堂での礼拝は、まるでどこかの教会でクリスマス礼拝
を守っているような気分でした。そして何よりも明るく広々とした介護専用棟と、いろいろな工夫
が盛り込まれた設備を目の当たりにして、ここで暮らしている方々にとっても、またお世話してお
られる職員の方々にとっても、本当によい「まきば」になったことを実感ずることができました。中
部教区副議長だった頃、「まきば」と教区の関係を整えるための働きの一端を担った者として感慨一
入であり、神様のずばらしいみ業を見せていただいたことを感謝しました。
「まきば」のような事業は特にそうだと思いますが、何事も「人を得る」ことがとても大事だと思
います。それは単にスキルの高い「人材」を得るということではありません。本当に信頼が置け、また人を信頼ずることがで
きる、つまり誠実な人、私利私欲や自分の名誉のためでなく奉仕ずる人、そういう人を得ることができれば、周囲の人々との
間に目然に良い関係が築かれていき、またそこには同じように誠実な人々の力が結集され、そして利権がらみではない浄財も集まってくる、「まき
ば」の歴史はそういうことを物語っているのではないでしょうか。
クリスマス礼拝においてお話ししたのは、小さな一本のろうそくの灯を大切に守って旅をしたこ
とによって、荒くれ男から弱い者を大切にできる人問へと新しく生まれ変わった一人の人の物語で
ず。クリスマスにこの世にお生まれになった主イエスは、まさに「風前の灯」のように弱い存在で
ず。しかしその主イエスを自分の心にお迎えして、大切にしつつ歩んでいくならば、私たちは新
しい「人」となるのでず。主イエス・キリストをお迎えし、主イエスと共に歩むことを大切にずるこ
とによって、「まきば」がこれからも人を得て、「青草の原、憩いの水のほとり」として歩むことができますように。
「まきば」の周辺風景D
愛知牧場〈有限会社愛知兄弟社〉
今号は、「まきば」の誕生にも、また「まきば」の生活にも、
大きな恵みを受けている「愛知牧場」を紹介します。
1946年、上海から引揚げて来た尾関誠一兄が、食糧難こ悩む戦後日本の状況を見て、愛知郡日進
村の広大な土地でテント生活をしながら開墾されたのが始まりです。最初は果樹園が中心でしたが、
試行錯誤の末、親交のあった賀川豊彦先生の提唱する「立体農業論」を取り入れて乳牛を飼育、現在
の愛知牧場の礎を築きました。こうした苦難の末、南山の赤茶けた禿山は「乳と蜜の流れる郷」に変え
られました。
はじめは「信愛農場」と名付けられましたが、伊勢湾台風で果樹園が打撃を受けたのを機に、愛を知
る牧場「愛知牧場」と改め、メンソレータムの「近江兄弟社」に倣い、「共に働く者は皆兄弟である」という意味を
込めて社名を「愛知兄弟社」と改めました。
開墾当初、誠一兄が土地を献げ、金城教会の農村開拓伝道所として出発した南山教会は、62年の時
を経て、現住倍餐会員180名の教会へと変えられました。
その後、広大な土地は、愛知池の工事で一部が水没し、東名高速道路の開通で東西に分断され、
愛知国際病院や「まきば」、特別養護老人ホーム「のぞみ」に譲渡して現在の広さになりました。
尾関信一社長就任以後は、ソフトクリームやジェラード、クッキー、生キャラメルなどの販売、乗馬クラプやパターゴルフ場、バーベキュー広場やレスト
ラン「□グテラスあいぼく」の運営にも力を入れ、観光牧場として、主力商品「あいぼく牛乳」のブランド
イメージを高めつつ、都市近郊型牧場として発展しています。
6万坪(甲子園3つ分)の広さを持つ敷地も、春秋の休日には観光客で満員になるほどの人気です。テレビや新聞でも
よく紹介されて日進市きっての観光地になっており、平日も幼稚園や小学校の遠足など団体客で賑わっています。
最近は、教区教会の皆様が愛知牧場とセットで「まきば」見学に来られるこもあります。
昨年、パンダによく似た顔の子牛が誕生して話題になり、テレビ番組で名前を募集、「パンモ」と
名付けられました。その可愛い姿の人気で、またまた牧場に多くの人が押し寄せました。
もともと愛知牧場の土地を購入して建てた「まきば」は、牧場と隣接して立地しており、こ入居
者の皆様も、朝晩、牧場の散歩や動物達との交流が、すっかり日常生活の中に組み入れられています。
また、牧場の中には、北欧のサイ□を模してデザインされた、クリスチャンのための超教派納骨堂
「十字ヶ丘・復活苑」があり、毎年春の記念会には2000人近い関係者を集めて礼拝を守ってきました。
地域職員によるクリスマス礼拝を持ちました
2月17日、「まきば」の礼拝室を会場に、近隣施設職員による合同クリスマス礼拝が行われました。
愛知牧場の東に位置ずる地域は「南山医療・福祉ゾーン」と呼ばれています。ここにキリスト教施設職員による連携のた
めの会「ぶどうの会」があります。日ころは、お互いの施設の歴史や働きを学ぶ研修会などを通して理解や交流を深めてい
ますが、昨年、初めて合同クリスマス礼拝を持⊃ことができました。
愛知国際病院、老人保健施設「愛泉館」、日進市東部地域包括支援センター、特別養護老人ホーム「のぞみ」、アジア保
健研修所、みなみやま調剤薬局、南山教会、そして「まきば」から合計45名の従業員が参加しました。南山教会の大島
牧師を通してクリスマスのメッセージが語られた後、食堂に会場を移して楽しくクリスマスを祝うことができました。
【十字ヶ丘に立つ大十字架】
愛知牧場の中心に小高い丘があり、その上に高さ10メートルの大十字架があります。
この十字架は愛知牧場の創設者、故・尾関誠一兄が、この荒地に牧場の開拓を始めてから
数年、困難の連続であった時、不退転の決意を新たにずるために立てられた祈りの場です。一番はじめは、母教会で
ある金城教会の青年会が大勢で電信柱を担ぎ上げて造ったそうでずが、伊勢湾台風で倒壊、
二代目の十字架が立てられました。コンクリート基礎の上に木製の電信柱を立て、アルミ板で覆って鉄
のリングで支えた頑丈なものでしたが、これも50年の風雪に耐え、再び倒壊が懸念されるようにな
りました。そこで一昨年のクリスマス、この十字架と誠一兄の信仰を受け継いだ南山教会によって
新しく立て替えられました。
設計士による構造計算で、伊勢湾台風より激しい暴風が当たっても倒れない強さに設計されて
おり、鉄製のパイプとアングルを十字に組み合わせ、その上からステンレスパネルを張り付けた、美
しくて頑丈な構造になっています。
愛知牧場の中心にあり、南山教会・愛知国際病院・愛泉館・アジア保健研修所・のぞみ・復活苑・「ま
きば」等、牧場の周囲に集まるキリスト教諸施設のシンボルとなり、この地での伝道の決意を表して
輝いています。
編集後記
「まきば」の前に西から東に走る坂道がある。道の一部が黄色く塗られている。まちの人々が「福祉ゾーン」と呼ぶこのエリアを走る車に対して
「ゆっくり、気をつけてね」とよびかけている。この道からは、そのような温かい思いやりの“こころ”が伝わる。「まきば」にいる人達にもそれぞれ
歩んできた人生の道がある。それぞれの方々の“道"を振り返ると、いろいろ伝わってくるものがあるだろう。「まきば」も13年の道を歩んだ。
そして、「まきぼ」通信も16号を迎えた。その歩んだ道を振り返るとき、どのようなものが伝わってくるのだろうか。
(森岡廣實)
(2010/02/15発行)